土地や住宅などの不動産を購入検討する時に、建築基準法で定められた「接道義務」を満たしているかどうか確認しましょう。
満たしていなかった場合、忘れた頃に思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があります。
接道義務とは何か、不動産を購入する時に何を確認すればいいのかを中心に解説します。
知らないと危険?接道義務に関するトラブル事例
接道義務を満たしていない不動産を購入した際のトラブルを紹介してくれているサイトを見つけました。
■購入時に業者から十分な説明がなかった、また虚偽の説明をされて違法物件を購入させられたケース2件→京都第一法律事務所|事件報告 自宅の前の道が「道路」でないと言われたら
■購入時に業者から十分な説明がなかったケース1件→T2Planning|忘れたころに掘り起こされた接道義務違反。説明義務違反が不法行為に問われた事例
上記リンクで紹介されたトラブル事例によると、「接道義務」を満たしていない不動産を購入した結果、売却したいのにできない、建て替えできないなどの不利益を被ってしまったようです。
■接道義務を満たしていないことで考えられるトラブル■
●住宅ローン審査の難易度が上がる
●売却できない、又は売却価格が大幅に減額される
●規模によってはリフォームや建て直しができない
●建て直し出来たとしても、建物サイズが小さくなる可能性がある
●接道義務を満たすために予定外の出費が必要になる
●接道義務を満たすために隣地所有者との交渉が必要になる場合がある
●相続人に負担が引き継がれる
接道義務を満たしていない不動産に関して、恐ろしい点は「時間が経ってから違法建築だと知ること」です。場合によっては時効で裁判することができないケースも考えられます。
上記リンク先で紹介されているトラブルも、不動産購入から10年以上後に「そろそろ売ろうか」と行動した時に気づいたケースが紹介されています。
未来の自分が想定外のトラブルを抱えないように、接道義務とは何か、トラブルを避けるためにはどうしたらよいかを理解しておきましょう。
接道義務とは?ポイントを理解しよう
【接道義務】
もし都市計画区域、準都市計画区域内に建物を建てたいなら、その敷地は建築基準法第42条で定められた幅員4メートル以上の道路に、2メートル以上接している必要がある。
このような場合は接道義務が満たされておらず、原則建築不可能と判断されます。
(参照:国土交通省/建築基準法(集団規定) PDF11ページより)
接道義務が設けられた目的
●避難経路の確保
●災害時に消防車や救急車が活動しやすくするため
接道義務における「道路」に注意
「幅員4メートル以上」の道路は、建築基準法第42条で定められた道路である必要があります。法律に不慣れな人がこの条文を理解するのは大変です。そこで、どこが「建築基準法に従った道路なのか」を確認する方法を紹介します↓↓↓。
「道路」の確認方法
■建築基準法に規定された道路かどうかを調べる方法■
●「○○市(町・村) 建築指導課」で検索し、建築指導課に直接問い合わせる
●「〇〇市(町・村) 道路台帳図」で検索し、地図上で調べる
自治体によっては道路台帳図がインターネット上に公開されていない場合もあるようです。また、道路台帳図を見ることが出来ても、専門用語の理解が必要な場合があります。お急ぎの場合は建築指導課に問い合わせることをおススメします。
幅員が足りない場合の例外
建築基準法第43条第2項に、接道義務の例外条件が示されています。都市計画区域、準都市計画区域で建築したいのに幅員が足りない場合は、この条件をクリアすれば建築することが出来ます。
ですが、条件が非常に厳しいです。接道義務の目的は「人命救助」のためなので、「どうしてもそこに建てたい」という場合を除いて、接道義務を満たすことが出来る不動産を探すことをおススメします。
買主が接道義務違反を避けるためのポイント5点
接道義務違反の不動産を購入してしまうと、忘れたころに思わぬトラブルに発展することを学んだところで、そのような目に遭わないように可能な限りの対策をとりましょう。
①区域を確認しよう
まず自分が土地や住居を買おうとしているエリアが都市計画区域か準都市計画区域かを確認しましょう。それ以外の地域では接道義務を満たす必要はありません。
■調べ方■
●担当の不動産屋さんがいれば直接聞く
●「都市計画図 市町村名」でネット検索
●各自治体の「都市計画課」に直接問い合わせる
●全国都市計画GISビューア(試行版)で確認
個人的には全国都市計画GISビューア(試行版)が早くて見やすいのでお勧めです。ただ試行版だけあって「確実に最新版の都市計画図です」と言い切ることができません。不安な場合はその他の方法で調べましょう。
全国都市計画GISビューア(試行版)の使い方を解説した記事はこちら
②特にこんな土地や住宅を買う時は注意
●1950年(昭和25年)より以前に建てられた物件
●古くからある集落にある物件
●都市計画区域、準都市計画区域の中でも「市街化調整区域」の物件
●旗竿地、袋地
●珍しい、あまり見ない形状の土地
実は接道義務を満たしていない物件は意外とあります。「中古だから」といって適法であるとは限りません。特に上記のような物件を購入希望する時は念入りに確認しましょう。
■「市街化調整区域」について■
ここは「市街化を抑制したい区域」です。接道義務に関わらず新築で家を建てることが非常に難しい区域です。そこに家を建てる必要がある人以外は特に慎重に購入を検討しましょう。
③実際に見に行こう
●道幅は充分か
→道幅があるからといって安心はできません(建築基準法42条の規定道路かどうかがわからないため)。ですが第一印象でまずどんな道かを確認しましょう。
●希望する敷地と接している道路はどのように接しているか
→いざという時に安全に逃げられるかどうかの視点で確認しましょう。妙な段差や溝はないか等を目視で確認しましょう。
④建築基準法42条に規定された道路に接道しているかを確認しよう
敷地に接している道路に幅があり車が何台も行きかう場所でも、実は私道で「建築基準法第42条」の道路にあたらない場合があります。
「道路」の確認方法で建築基準法第42条の道路に接しているかどうかを確認しましょう。
⑤安心できる不動産業者と取引し重要事項説明を受けよう
不動産屋さんを介して最終的に土地や住居を契約する前に、宅地建物取引士から法律で定められた重要事項を説明されます。その中に「接道義務を満たしているかどうか」についての項目があります。どういう根拠をもとに接道義務を満たしているといえるのかをきちんと聞いておきましょう。
また、取引する不動産業者がきちんとコミュニケーションをとってくれる「安心できる」業者かどうかも重要です。疑えばキリがないですが、こちらの質問に誠実に答えてくれるか、無理に売ろうとしてきていないかなどを判断基準にして、安心して契約できるかどうかを考えましょう。
コラム|どうしてトラブルが起こるの?
「プロに任せていれば大丈夫なんじゃないの?」「1950年にできた法律だから、今ある不動産はほとんど接道義務満たしているはずでしょ?」と思われるかもしれません。ですが、そうもいかない事情があります。
接道義務を満たしていない空家等はまだまだある
平成30年住宅・土地統計調査によると、「居住世帯のない住宅」で敷地に接してる道路の幅員が
●2メートル未満:616,600戸
●2~4メートル未満:2,436,500戸
●接していない:303,500戸
これだけあることがわかりました。調査対象総数のうち3割以上です。
「居住世帯の無い住宅」の定義には「空家」が含まれます。つまり中古住宅、または更地を購入してしまう可能性があるので注意が必要です。
(平成30年住宅・土地統計調査 「住宅の構造等に関する集計 全国・都道府県・市区町村」より住環境193-2を参照)
悪質な業者と取引してしまう可能性がある
「知らないと危険?接道義務に関するトラブル事例」では
●不動産業者に「接道義務」について説明をしてもらえなかった
●業者が虚偽の申請を行い、建築確認が通ってしまった
というケースが紹介されていました。
疑えばキリはないですが、「悪質な業者は存在する」と意識することは大切だと考えます。
専門家も間違える
●建築確認が正しく通ってしまった
そんな場合もあります。
法律は、色んなケースに対応できるようにあえて表現をぼかしたり、定義をしっかり理解する必要がある表現を使ったりして作られます。そのため判断が難しいケースは必ず出てきます。また、人間ですのでどうしてもミスは出てきてしまうでしょう。
まとめ|不動産の買主がトラブルを避けるには
接道義務違反は思ったよりも起こりやすい違反に思えます。特に以下の3点を意識しましょう。
●自分の希望する不動産がどんな特徴なのかを理解する
●契約前に重要事項説明の中で「接道義務」に関する説明を聞く
●不信感を感じる業者との取引を避ける
どうしても限界はありますが、「人任せにしすぎない」ことを心がけましょう。不動産購入は世の中の買い物の中でトップレベルに難しい買い物の一つです。当事者意識をもって臨みましょう。
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このページは、土地に関する法律用語などの一般的な概要を説明したものです。
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