「2項道路」という言葉をご存知ですか?
現在購入目的で土地を探している方や、中古住宅を購入し将来的に建替えよう、と考えている方には必ずチェックしてもらいたい項目の一つです。
今回は2項道路とはどんな道路を指すのか、また2項道路と知らずに契約するとどんな危険性があるのかについて解説いたします。
2項道路と知らずに不動産を入手|考えられるトラブルは?
契約や相続など、不動産を入手する場合に「そんなつもりじゃなかった」という事態は往々にしてあります。
その「そんなつもりじゃなかった」という事態の一つとして、「不動産(敷地)が2項道路に接していた」が挙げられます。
そんな事態になる理由はいくつか考えられます。
■考えられる理由■
●「2項道路」について知らなかった
●「2項道路」に関して説明されたが、具体的な影響などを理解するのが難しかった
●仲介業者を介さなかったため、宅地建物取引士から重要事項説明を受けていない
●悪質な不動産業者から「2項道路に接していない(接しているのに)」などの事実と異なる説明を受けた
入手した不動産(敷地)が2項道路に接していることについて納得せずに購入した場合、不動産を「建替え」したくなった時に「希望どおりの形状に建替えられない」「想定以上の予算がかかる」「できるリフォームの規模が限られる」といったことになりかねません。
「そんなつもりじゃなかった」を防ぐためにも、「2項道路」に関する建築基準法の規定をインプットしましょう。
2項道路とは?
「2項道路」が何かを知っておくと、自分が希望する不動産の条件を絞るのに役立ちます。基本的な規定をまとめました。
名前の由来
2項道路は、建築基準法第42条2項に規定が定められた道路のことです。「建築基準法上の道路とみなす」という意味から、「みなし道路」とも呼ばれます。
どんな道路?
1950年11月23日の建築基準法施行日において、都市計画区域、準都市計画区域の中ですでに建物が多く建ち並んでいた幅4メートル未満の道路のうち、特定行政庁が指定したもののことです。
■特定行政庁■
建築主事(「建築基準適合判定資格者」という資格の保持者)がいる行政のトップ(市町村長または都道府県知事)のこと。「2項道路」の理解が目的のこの記事内では「行政のえらい人が決めた」位の認識で充分かと思います。
2項道路が定められた経緯は?
建築基準法が施行された当時、都市計画区域、準都市計画区域内において幅員4m以上の道路に接していない建物は数多く存在していました。
ですが、建築基準法に従うなら「接道義務」を満たす必要があります。
このままでは「都市計画区域、準都市計画区域内において接道義務を満たしていない」違法状態の建物が多く存在することになってしまいます。
そのため、幅員4m未満の道路でも、それが2項道路なら特別に接道義務を満たしていることにしよう、という理由から規定されました。
2項道路の目的は?
2項道路に指定された道路は、行政としては将来的に道路幅を4m以上にしたい、と考えられています。
接道義務を定めた理由の一つは「消防車や救急車などの緊急車両が活動しやすいように」です。幅員4m以上の道路なら、迅速に救命活動ができ、その分人命が助かる可能性も高くなる、と考えられているからです。
2項道路の目的を達成する方法とは?
2項道路を将来的に幅員4m以上にするには、道路拡張工事が必要です。
ただ2項道路に指定されたエリアには建物が多く、一度に道路拡張工事を行うことは困難です。
そこで行政はその対策として建築基準法第42条2項に敷地と道路の境界線に関する規定を定めました。
続いて、建築基準法第42条2項の規定を守るための具体的な方法を解説します。
セットバック|建築基準法第42条2項を守るための具体的な方法
建築基準法第42条第2項では、幅員4m未満の道路で、2項道路に接する土地については、道路の中心線から2m後退した位置を境界線とみなす、という内容が規定されています。
この規定を満たすために行われるのが「セットバック」です。
「セットバック」とは前面道路の幅員を拡げるために、道路と敷地の境界を後退させることを指します。
建築基準法では2つの道路条件のセットバックについて詳しい規定が定められています。
セットバックの原則ケース
道路の中心線から2m後退した線を、道路と敷地の境界線として扱う。セットバックされた面積分を除いた残りの面積を建築基準法上の敷地として扱い、その面積から建蔽率や容積率を計算をする。
セットバックの例外ケース
道路の反対側が川やがけ、線路敷地などの場合、道路反対側から4メートル後退した線を道路と敷地の境界線として扱う。セットバックされた面積分を除いた残りの面積を建築基準法上の敷地として扱い、その面積から建蔽率や容積率を計算をする。
セットバックによる具体的な影響とは?
セットバック面積は建築基準法上の敷地として扱うことが出来なくなります。そのことがどんな影響を与えるのかを解説します。
①建物を建てられる面積が狭くなる
セットバック後の残された敷地に建てられる建物の面積は狭くなります。都市計画ではエリアごとに「建蔽率」が定められているからです。
■建蔽率とは■
都市計画区域、準都市計画区域内で建物を建てる時に適用される規定で、建築基準法の敷地面積のうち、建築物を建てられる面積の割合を示したものです。
建築基準法では、日照、防災や景観の観点から、用途地域ごとに建蔽率の最高限度を定められており、自治体はそれに従って、都市計画としてそのエリアの特徴にふさわしい建蔽率を定めます。
建蔽率=建築面積÷敷地面積で求めます。建蔽率は自治体ごとに決められているので、変えられません。つまり敷地面積が狭くなれば建築面積も狭くなります。
②建替え前と同じ形状の建物を建てられなくなる
セットバック後の残された敷地に建てられる建物の形状は変わります。都市計画ではエリアごとに「容積率」が定められているからです。
■容積率とは■
都市計画区域、準都市計画区域内で建物を建てる時に適用される規定で、建築基準法の敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合を示したものです。
建築基準法では、日照、防災や土地の有効利用などの観点から、用途地域ごとに指定容積率が定められており、自治体はそれに従って、都市計画としてそのエリアの特徴にふさわしい容積率を定めます。
容積率=延べ床面積÷敷地面積で求めます。延べ床面積とは、建物の各階の床面積の合計のことです。容積率は自治体ごとに決められているので、変えられません。つまり敷地面積が狭くなれば、建物内の延べ床面積が変わります。各階の床面積が容積率に沿って変更されれば、建物の形状を建て替え前と同じものにするのは難しくなると考えられます。
「そんなつもりじゃなかった」を防ぐためには?
土地を探している人は「積極的に土地探ししている人」と「相続や贈与などにより入手することになってしまった人」に分類されます。それぞれの場合で「そんなつもりじゃなかった」を防ぐ対策を考えました。
積極的に土地を探している人の場合
■具体的な対策法■
●広告に「要セットバック」の文言がないか確認する
●契約前に宅地建物取引士から受ける重要事項説明の内容が自分と認識があっているかどうかを確認する。(2項道路なら買うつもりないのに、この敷地は2項道路に接していると説明される、など)
●希望地の下見の際に道路の幅や様子(デコボコして古そう、など)を確認して、心配なら自治体の建築指導課に確認する。
相続や贈与などにより入手することになってしまった人の場合
■具体的な対策法■
●できるだけ早く対象の土地が接している道路は建築基準法上どの道路なのかを調べる。
調べ方:自治体の都市計画課や建築指導課で相談。
この記事は2項道路に関するトラブルを防ぐことを目的に作成しています。ですが相続や贈与などの場合「土地に関する情報」は集めるだけ集めておいて損はありません。用途地域、建蔽率や容積率に関して知りたいなら自治体の都市計画課に相談し、土地の境界や面積、権利関係に関して知りたければ土地家屋調査士に依頼することも検討しましょう。
まとめ
建築基準法が施行されてから70年以上が経過しましたが、2項道路はまだ存在しています。
ですが、入手する前に対象の敷地が2項道路に接しているかどうかを確認すれば「そんなつもりじゃなかった」を防ぐことは難しくありません。
2項道路とは何か、2項道路に接している土地を入手するとどんな影響を受けるのかを理解し、運命的な土地と出会うために活用しましょう。
免責・禁止事項
このページは、土地に関する法律用語などの一般的な概要を説明したものです。
内容は、2024年時点の情報にもとづき記載しております。定期的に更新を行い最新の情報を記載できるよう努めておりますが、内容の正確性について完全に保証するものではございません。
掲載された情報を利用したことで直接・間接的に損害を被った場合でも当方は一切の責任を負いかねます。
文章、画像などの著作物の全部、または一部をKaya Kamikiの了承なく複製、使用等することを禁じます。